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講演要旨
日本海の流れ,最近に得られた多くの知見について
尹 宗煥
九州大学応用力学研究所

   1991年のソ連邦崩壊による冷戦の終結から今年で丁度10年が経つ。 冷戦の終結によって日本海周辺国による国際共同観測が可能になるなど日本海の海洋循環の研究は以前と比べて格段に活発化し、日本海の深層水の異変(温暖化と溶存酸素の減少)等の多くの新しい発見及び知見が得られた。

   古くから様々な説のあった対馬暖流の平均流路については3分枝説が有力になりつつあり、特に日本沿岸沿いの200m以浅に束縛される沿岸分枝(第1分枝)の存在が確認された。 第2分枝は日本沿岸沿いの大陸棚傾斜面(500m〜1000m深)に束縛される流れであることもわかってきた。 この対馬暖流は熱量と塩分を日本海北部に反時計回りに輸送することによって日本海上部固有水の形成に関わり、低温、低塩分のリマン海流と北朝鮮寒流はアムール川起源の低塩分水をロシア沿岸沿いに反時計回りに運びながら離岸し、対馬暖流の直下に塩分極小を持つ日本海中層水を形成する。

   ウラジオストク南東沖(132度以東)には反時計回りの大きな循環があり、その中心では冬季の冷却と対馬暖流による塩分の補給によって中層(数百〜1000m程度)にまで達する対流混合が引き起こされる。 この対流混合水は混合層の底から日本海上部固有水となって日本海の中層に広がって行く。 反時計周りの循環の西側の東経132度線付近には南北方向の温度(密度)フロントが存在し、そのさらに西側は高水温偏差域となっている。 ウラジオストク付近の山岳地形効果によって生成される冬季の季節風の渦対がこれらのフロント、反時計回りの循環、高水温偏差域の形成に密接に関わっている。また晩秋に北朝鮮沿岸沿いを突然反転北上する海流がARGOSブイによって発見されたが、これは季節風の負の渦の効果によるものであることもわかってきた。

   日本海の北部の深層では1993年以来、多くの長期係留測流が行われ、海底地形の傾斜部では海底地形に沿った反時計回りの循環が卓越し、平坦な部分では中規模渦の活動が活発であることも確認されている。

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