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日本海の中層にも汚染が進んでいる 山下 信義 産業技術総合研究所 日本海は長さ1600km、幅900km、最大水深3700mに対して外洋との接続部分は150m以下の深さしかなく、特徴的な海盆地形をもつ世界有数の「半閉鎖系海域」です。 そのため、「天然の実験室、natural laboratory」として数多くの海洋学的研究が行われています。 また、海洋は陸上で使用された化学物質のたまり場と考えられ、日本海には韓国、北朝鮮、ロシア、日本等、複数の国から放出された産業起源の莫大な化学物質が流入しており、これらの化学物質の海洋環境挙動を知ることは国際的な危険性評価において重要です。 現在、日本近海の表面海水については政府機関による海洋調査が行われています。 しかし、水深200m以深の深海については測定法が確立されていないため、ほとんど研究されていません。 このため私たちは国外の研究機関と協力し、深海6600mまで使用可能な大容量海水試料採取装置を開発し、日本海に適用しました。 特に最近、社会的関心を集めている、いわゆる環境ホルモンの仲間であるノニルフェノールとポリ塩素化ビフェニールについて、表層海水から深層海水までの鉛直分布を測定し、これらの物質が日本海にどのように流入しているのかを調べてみました。 その結果、これらの物質の挙動には日本海の水塊構造が大きく影響していることがわかりました。 特に、1500m以深の中層水に汚染が認められたため、これがどのように輸送されてきたのかを推測し、結果として、従来の表層海水を用いた海洋調査法では海域全体の汚染状況を知ることは不可能であることを明らかにしました。 また、日本海沖(後志海盆)の汚染状況はノニルフェノールが150pg/L以下、ポリ塩素化ビフェニールが1.6pg/L以下であり、海水自体の危険性は無視できることがわかりました。 これらの成果は政府機関の海洋調査法にフィードバックされ、より信頼性の高い海洋調査法を開発するために役立てるとともに、地球規模の環境ホルモンの外洋汚染調査につながり、現在カナダ、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本が参加する国際合同調査研究が進行中です。 |
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