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日本列島周辺の海底

その2 南海舟状海盆及び付近

南海舟状海盆(トラフ)は、伊豆半島石廊埼南南西沖の水深3,500mから四国足摺岬南方の水深4,900mに達する底の浅い海盆である。南海舟状海盆は、その北東方延長にあたる駿河舟状海盆と共にプレートの境界に位置し、フィリピン海プレートとユーラシアプレートが、年間4〜5cmという相対的に遅い速度で収斂する境界である。中部地方の深発地震面は、深さ70〜80kmまでであり、南海舟状海盆からの距離もたかだか230〜240kmと未発達である。

1969年以降、南海舟状海盆を含む本州南岸沖は、海洋情報部の大陸棚の海の基本図測量等により、次第にその地形・地質構造の特徴が明らかになってきた。その成果は縮尺20万分の1の海底地形図、同地質構造図、地磁気異常図、重力異常図として出版されており、その後も、ナローマルチビーム測深データ等を編入した新しい海底地形図と海底地質構造図が作成され、1992、1993年には、南海舟状海盆を包含する縮尺50万分の1の図類が刊行された。

一方、当該海域に係わる海底地質図が地質調査所から出版され、そのなかで南海舟状海盆の北側斜面には付加体が分帯されている。付加体前縁部の構造は、圧縮された褶曲や陸側に傾斜するスラストからなることが各機関のマルチチャンネル音波探査、さらにはDSDP-ODPの掘削、日仏科学協力等を通じて、より明確になってきた。南海舟状海盆は、プレートの収斂地帯の代表として世界的にも注目され、現在も国際協力事業が進展中である。本海域についての調査距離は、海洋情報部だけでも35,000海里以上に達する。

南海舟状海盆及び付近の海底は、大陸棚、上部斜面(陸棚斜面)、深海平坦面、下部斜面(陸側トラフ斜面)、トラフ底、大洋底(四国海盆)からなる。この他、大陸棚・上部斜面からトラフ底にまで達する数本の顕著な海底谷がある。また、トラフ底から四国海盆への移行部にはごく緩い海溝周縁隆起帯が認められる。

西南日本沿岸の大陸棚外縁の平均水深は140mであるが、御前埼から駿河湾西岸にかけては、平均水深よりは数10m浅い。プレートのもぐり込みの影響が地形に反映して大陸棚外縁水深を浅くしている。

陸棚外縁から深海平坦面にいたる陸棚斜面は、小縮尺の海底地形図では一般に単調な地形を示すが、多くの斜面において夥しい数のslope gullyと共に海底地滑り地形が認められる。深海平坦面は、上部斜面と下部斜面を分ける位置に発達した構造上の凹地である。堆積物がこの凹地を埋積していることから、海底面は概して平坦である。規模の大きな平坦面として、東から西に、熊野舟状海盆、室戸舟状海盆、土佐海盆、日向海盆が発達する。これらの海盆には、陸棚斜面を刻む谷から堆積物が流れ込んでいる。

深海平坦面の外縁部からトラフ底に至る下部斜面は、断層と褶曲による複雑な地形が発達し、細長い高まり地形であるリッジと凹地であるトラフとが幾重にも平走し、ridge and trough zoneをなす。この起状地帯のなかで最も陸側(下部斜面の陸側上縁部)に、規模の大きなリッジが見られる。外縁隆起帯とも呼ばれる。下部斜面の断層の中には地形上からも急崖として東西に追跡できる規模の大きな断層がある。大部分の地域で高角逆断層をなし、外縁隆起帯の頂部を中心とする正断層の卓越する地形区と、外縁隆起帯の海側の逆断層の卓越する地形区とを分ける位置にあり、外縁隆起帯はこの断層を境にして抜き上がるようにして発達した。これを地質構造上意義のある断層として、Nankai mid-slope tectonic line(南海トラフ中央構造線)と呼ぶ。

トラフ底には小起状が認められ、その多くはトラフ底に南方からかかる圧縮力によって生じたトラフ充填堆積物の変形したものである。このほかトラフ底には堆積物の供給路となるチャンネルが自然堤防などを部分的に伴い、トラフの東部から紀伊半島沖に認められる。

西南日本外帯沖の海底地形の形成は、フィリピン海プレートの運動に大きく係わっている。外縁隆起帯、ridge and trough zone、南海トラフ陸側斜面などに見られる南北方向の大きな地形の偏位は、フィリピン海プレート内のサブスラブ間の境と一致する。

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