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日本列島周辺の海底

その3 琉球弧と沖縄舟状海盆(トラフ)

1968年のハント号(アメリカ)は、黄海〜東シナ海で予察的地質構造調査を行い、堆積盆などを始めて明らかにした(Emery et al., 1969)。南西諸島周辺海域については、1975年の地質調査所の広域調査、1973年〜76年、1984〜87年の海上保安庁水路部(現 海洋情報部)の詳細な大陸棚の組織的調査(地形、地質構造、地磁気、重力等)があり、また同部が現在も展開中の沿岸の海の基本図測量などにより、次第に沖縄舟状海盆をはじめとする琉球弧の詳細な海底地形・地質構造が明らかになってきた。沖縄舟状海盆は典型的な背弧海盆で、海盆底は現在も拡大しつつあるともいわれ、この検証のために、1984年にはリソスフェア探査開発計画(DELP)の調査(地震探査、地磁気、地殻熱流量等)も行われた。1988年には、ゾンネ号(ドイツ)による伊平屋島北西の沖縄舟状海盆中軸部での熱水鉱床の発見があった。その後、潜水調査船「しんかい」による精力的な調査が加わり、沖縄舟状海盆の中部からは海底熱水活動に伴う熱水の噴き出し、チムニー、熱水鉱床などの発見が相次いだ。

本海域の骨格となる地形は、大隅群島から先島群島に至る島々を頂く南西諸島海嶺を中心にして、その東側は南西諸島海溝に、西側は沖縄舟状海盆を経て東シナ海の陸棚となる。現世の火山活動で特徴づけられる火山フロントの位置は、南西諸島海嶺の北部では海嶺頂部とほぼ一致するが、中部では同海嶺の西縁に位置し、更に南部では沖縄舟状海盆内の東縁へと、海嶺の頂部からはどんどん西にずれていく。南西諸島海嶺から海溝に至る大陸斜面には深海平坦面が発達する。また、多くの海底谷が斜面を開析している。海底谷の末端は深海平坦面に達する。深海平坦面は東北日本太平洋側のものに比べればはるかに起状に富むものである。南西諸島海溝は、北は九州・パラオ海嶺に限られ、南は台湾の東方沖にまで続く。この間の距離は1,350kmで、最深部は沖縄島南方の水深7,460mである。海溝の北部では、奄美海台と大東海嶺の西端部が海溝軸を跨ぐように分布することから、海溝軸は連続性を欠き、ここでは海溝特有の幅狭い溝地形を失っている。

沖縄舟状海盆の水深は、北部の男女海盆の600〜800mから、南部の2,000m以深へと深くなる。また、北部では平坦な海底の各所に島、海丘などの浅所がある。沖縄舟状海盆の中・南部で最も注目される地形は、海盆の中軸部に見られる中央地溝帯とその中央の裂け目に貫入している岩体(中央海山・海丘)である。

海盆中部の地溝帯にあたる那覇の北北西約160kmには、貫入岩体が伊平屋海丘群をつくっている。この海域は潜水調査船でも詳しく調査され、海底から熱水が噴出しているのが発見された。また、伊平屋海丘群の南方約35kmにある伊是名海穴の北東斜面の水深1550m付近で、海底熱水鉱床と共に、盛んに白い熱水を吹き上げている高さ3mのホワイト・スモーカーをはじめとする沢山のチムニーが発見された。

沖縄舟状海盆の西側斜面(東シナ海側)は、舟状海盆を形造った撓曲運動によってできたものである。曲降には随所で断層をともなっている。北部に比べて1,000m以上も沈下量が大きい南部地域では、舟状海盆の斜面壁は海底谷の下刻が進んでいる。東側斜面(南西諸島海嶺側)の輪郭は複雑に出入りする。この一因は、舟状海盆の斜面に第四紀火山活動が重なったためである。

東シナ海の陸棚は、一般に起伏に乏しく平坦である。外縁の水深は140〜160mほどである。

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